一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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それからの一週間、拓海は大里の会社の整理に忙しく、実花子の職場へはほとんど顔を出さなかった。たまに来ても、またすぐに忙しなく出かける。
真里亜の後任秘書も決まっていないらしく、事務処理関係のこともしなくてはならないようで、大忙しなのははたから見てもわかった。
実花子は警察に事情を聞かれたあとは業務になんら変わりはなく、拓海の秘書代行をしてあげたいくらいだった。それは単に、拓海のそばにいたいからということにほかならないけれど。
そんな不純な動機で秘書代行が務まるわけはなく、拓海とじっくり会えずに少し悶々と過ごしていた。
そして、待ちに待った拓海からの電話があったのは、それからさらに二週間が経過したときのことだった。
季節は梅雨が明けて夏本番。湿気をたっぷりと含んだ、小雨の降る夜だった。
『セレンディピティで待ってる』
電話でそう言われて、お風呂に入ろうと裸になりかけた実花子は、慌てて洋服をもう一度着て大急ぎ店へ向かった。これがほかの人の誘いだったら、「今からお風呂だから」と無下に断っていたに違いない。
拓海ときちんと会うのは三週間ぶり。久しぶりのため、ふたつ返事だった。