一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
鬱陶しい雨もなんのその。鼻歌も飛び出すほどウキウキと弾んだ心で、セレンディピティのドアを開ける。カウンターには電話のとおり拓海の姿があった。
「いらっしゃいませ」
いつものように迎えてくれた龍二に「こんばんは」と挨拶をして、拓海の隣の椅子を引く。
「待たせて、ごめんなさい」
「いや、遅くにごめん」
実花子に向けた拓海の顔は、明らかに沈んだ表情だった。相当疲れているようだ。
「大丈夫ですか?」
実花子の質問に、拓海は軽くうなずくだけ。大丈夫なわけがない。
「実花子ちゃんはなににする? いつもの?」
龍二に聞かれて、「はい、お願いします」と返す。すっかり実花子の定番となったコスモポリタンは、それほど待たずして出された。