一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


「よかった。たくさん買っちゃったから、祐介くんの分も持たせるね」
「ありがとう」


そうして、しゃべるのもほどほどに次々に口へ運び、テーブルに並べられた具材たちは七割方が実花子のお腹の中へ、残りの三割は千沙のお腹へ吸収された。

失恋した割に、実花子の食欲はそんな様子は露ほども見せない。実花子の場合、恋と食欲との相関性はまるでないのだろう。


「それで、なにかあったの?」


簡単にテーブルの上を片づけると、千沙は朝の話題に戻した。


「えっと……」
「なに?」


もったいぶっているわけではないが、どうしても口が重くなる。今朝は祐介に難なく言えた言葉が、どういうわけかすんなり出てこない。時間の経過とともに、拓海との結末が実花子の体に深く沈み込んでしまったのか。

いや違う、受け入れ難い事実をまだ消化しきれていないからだ。拓海が綺麗さっぱり存在を消したのに、未だに現実味がない。
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