一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「ねぇ、実花子ちゃん?」
痺れを切らした千沙に、なんとか「別れたの」と声を絞り出す。
「……別れたって、椎名社長と?」
うなずくと「どうして突然?」と目を瞬かせた。
それには首を横に振るしかなかった。どうしてそうなったのか、実花子自身にもわからないから。
「わずらわしくなったんだって」
どうしてだろう。自分のことなのに、どこか他人事に思える。
ついさっきまで重かった口から別れた事実を出してみると、映画やドラマの話でもしているような感覚になる。
「わずらわしくって……」
千沙は一気に顔を曇らせた。まさか、そんな事態になっているとは予想もしていなかったのかもしれない。
ちょっとした痴話喧嘩。少し愚痴を聞いておいしいものを食べさせれば、すぐに元気を取り戻すと思っていたのだろう。