一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
迷った挙句、実花子が指差したのはコーヒーカップだった。単に空いているというだけの理由だ。
店員に案内されて乗り込む。実花子たちのほかには離れたところに二組のカップルがいて、動きだすのを今か今かと楽しそうに笑い合い待っていた。
対して実花子たちが乗ったカップのぎこちない雰囲気といったらない。向かい合って座っても目を合わせられず、話すこともない。
なにしにここに来たの?とでも思われそうなほど重苦しい空気だった。
ゆっくりとカップが動きだす。周りからあがるはしゃぎ声。実花子たちのカップは回転もせずに、ただ地面を滑るように動くだけ。拓海も実花子も、ハンドルを握って回転させようともしない。
歩いてぎこちないものは、乗り物に乗ろうが、変わらないと気づかされただけだった。
「あの、よろしかったら乗りませんか?」
女性のスタッフが声を掛けてきたのは、ちょうど観覧車の前を通り過ぎようとしていたときだった。
「只今、おふたりのお写真を無料で撮影するサービスをしているんです」