一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
実花子が仕留めて悶絶していたのが拓海だったのだ。
「えっ、ご、ごめんなさい!」
どうしてうしろから抱きつくような登場の仕方なんてしたのか。
「……もっとお手柔らかに頼むよ」
「痴漢だと思ったんです」
実花子の手を握って拓海が立ち上がる。行き交う通行人はみな、どことなく哀れみを浮かべた目を向けていった。
「護身術も侮れないな」
相当痛かったらしい。手首を執拗に撫でまわし、拓海はやれやれといった表情だ。
「本当にごめんなさい。でも、どうしてこんなところに?」
メディアテックに設置していた拓海の部屋は、もう二ヶ月も前に引き払っている。誰かと打ち合わせでもあったか。