一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「ほんと、酒癖が悪いというかなんというか……」
大きな溜息が聞こえ、実花子は満を持して重い瞼を持ち上げる。ちょうど顔の真上に見えたのは、形の整った鼻の穴だった。
楕円の片側がシュッと細い、ペイズリー柄のような理想的な鼻の穴の形はなんと呼べばいいのだろう。
そんなくだらないことをぼんやり考えていると、声の主は実花子が目を開けたと気づいたらしい。鼻の穴だけの角度から、真正面の顔を実花子に向けてきた。そして彼女に近づき、またもや「うっ!」と口もとを手で覆う。
そんなに臭いの……?
自分の匂いは自分ではわからないもの。鼻で大きく息を吸ってクンクンしてみるが、臭さは感じない。
「……お水、ちょうだい」
実花子の要望に「ヘイヘイ」と言いながら、キッチンへ向かった人物、上原祐介は彼女の弟である。実花子にとってかわいくて仕方のない弟だ。
中学二年生の十四歳、まだか弱い存在である。