一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


二十八歳の実花子は、世間一般的にいうと女にどんどん磨きがかかり、三十代を目前にこれからさらに花を咲かせようと女っぷりを発揮している年齢だ。

ところが、彼女は女らしいという言葉からは対局にいるといってもいいだろう。スカートは高校の制服を脱いで以来履いた記憶はなく、かろうじて女性らしいさを感じさせる長い髪の毛は毎日まとめている。しかも後頭部あたりにゴムで一本縛りという、味も素っ気もない髪型だ。

世の女性がヘアアイロンで作る〝ゆるふわの巻き髪〟に憧れはあっても、実践できるかといったら答えはノー。鼻筋こそ通っているが、特別美人でもないのにメイクも手抜きだ。女を一番磨ける恋も、遠い遠い昔の記憶である。

でも、それでいいと実花子は考えている。恋愛も結婚もまだまだ先の話だ。


「はい、水」
「……ありがと」


祐介に介助されながら起き上がると、持ってきてくれたペットボトルを受け取った。ふたを開けようと捻るが、酔っ払っているせいか力が全然入らない。


「貸して」
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