一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「浮気をしても許せと」
「極論だけどね」
「ただ、妻という存在がほしいだけだと」
空になったグラスをコンと強めに音を立ててカウンターに置く。その音で、賑やかだった店内が数秒間真空状態のようにシンと静まり返った。
「……実花子ちゃん?」
白鳥が隣で目を瞬かせる。
白鳥も白鳥だ。どうしてそういう人を紹介するのだろうか。なにか恨みでもあるのか。愛情のない結婚を推奨する弁護士なんて聞いたこともない。
「マスター、お会計ここに置いておきます」
テーブルに三千円を置き、実花子は席を立った。
「おいっ、実花子ちゃん! 大事な部分はまだ」
「これから行かなきゃいけないところがあるので失礼します」
ひったくるようにして荷物を持つと、実花子は煙をかきわけて店の外へ飛び出した。
ひと言物申さなければ気が収まらない。バッグからスマートフォンを取り出し、土曜日に勝手に登録された拓海の番号を呼び出した。