一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
いただきますと言ってから、人生初のカクテルにそっと口をつける。その瞬間、口の中に爽やかな香りが広がる。見た目から連想した甘ったるい味ではなく、柑橘系の甘酸っぱさがほど良い。
「おいしいです」
「それはよかった。ウォッカベースにクランベリーとライムを少し。苦手じゃなかったですか?」
「はい、全然」
両手を胸の前で振って、全身全霊をかけて否定する。
「カクテルがこんなにおいしいものだなんて、生まれてはじめて知りました」
実花子の言葉にマスターがクスッと笑う。
それを見て大袈裟すぎたかと反省したが、本当にそうなのだ。今までお酒といえば、ビールに焼酎に日本酒。べつにそれらが悪いと言っているわけではないけれど。
こんなにもおいしいお酒がほかにあるのに、今日までいったいなにをしてきたのだろう。こういうお店に来る機会のなかった過去の、なんと恨めしいことか。
「ここへ来てなにを飲むか迷っていらっしゃるお客様には、第一印象でこちらが勝手に作ってお出ししているんですよ」