一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
見かねた祐介は実花子からペットボトルを取り上げ、あっさりと開封して再び彼女の手へ握らせた。
「……ありがと」
本当に頼りになる優しい弟だ。
生活費の面倒をみているのは実花子に違いないが、上原家を精神的に支えているのは祐介だとつくづく思う。
「ったく、飲みすぎだって。体壊したらどうするんだよ」
「大丈夫、大丈夫」
「その自信はどっからくるんだか」
祐介は呆れ顔で見下ろした。
その祐介の存在こそが、実花子に結婚はまだ遠い先の話だと思わせている。彼を一人前にすることが、実花子に課せられた使命なのだ。両親を亡くしているから、余計に絆が深まったのかもしれない。
ふたりが交通事故で亡くなったのは六年前。ちょうど実花子が大学四年生の秋、祐介はまだ八歳だった。
就職先は決まり大学の学費も納めてあったおかげで、無事に卒業できたのは幸いだった。
それからは、ふたりで肩を寄せ合い暮らしている。