一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「お代わり、お作りしましょうか?」
「はい、お願いします」
空になったグラスをマスターに手渡したときだった。お店のドアが開き、視線をそちらへ移す。拓海だ。思ったよりも早い到着だった。
「実花子、お待たせ」
「……こんばんは」
せっかくマスターにいい気分に持ち上げてもらったというのに、〝問題児〟の登場により効果が半減する。とはいえ、マスターだって客商売がゆえの〝ピンク〟だろうが。
「拓海と待ち合わせ?」
挨拶を交わした私たちを見て、マスターが目を丸くする。
名前で呼ばれたということは、拓海はこの店の常連客か。
「龍二にも紹介するよ。俺の婚約者、上原実花子さん」
この人は、何度言えばわかってくれるのか。やはり思考回路のどこかに欠落があるとしか思えない。