一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

そこで大切な任務を思い出した。拓海と待ち合わせた本来の目的はカクテルの初体験ではない。もっと重要事項だ。

とはいえ、今ここであの話を持ち出してもいいものか。この店が拓海とまったく関係のないところならまだしも、マスターである龍二とは友人。その人に聞こえる距離で、拓海にとって酷な話をするのはどうしても気が引ける。


「もしかして、俺はいないほうがいい?」


なかなか話し出さない実花子に気づいた龍二が、気を利かせて聞いてきた。


「そうなら少しの間、奥に籠ってるから。お客さんが来たら呼んでもらえる?」
「悪いな、龍二」
「すみません……」


龍二が店の奥に下がると拓海とふたりきりの空間が出来上がり、それはそれで妙な緊張感に包まれる。
実花子からする話といったらひとつしかないのに、拓海はまるでわかっていないような顔だ。


「白鳥さんから聞きました」
「なにを?」
「椎名さんが私とお見合いした訳を」
「そう」
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