一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
いっさい感じないというのは嘘だ。実花子にも、そこそこ苦労して弟を育ててきた過去がある。お金はあって困ることはないだろう。
でも、この際百パーセントそうだと言っておこう。そうしないと、この話に終わりが見えないから。
拒絶を意味する返事を聞いてもなお、拓海はその表情を崩すことはなかった。それどころか、さらに顔がパッと明るくなる。
「ますます気に入った」
「……え?」
意味不明の言葉が飛び出す。
「絶対にキミと結婚してみせる」
「……はい?」
これはどういう展開だろうか。実花子は拓海の決意を改めて強固なものにしてしまったのか。
男勝りで嫉妬もしないだけじゃなく、そのうえお金に興味がまったくないという、拓海にとっての好条件を追加しただけだろうか。
なんていう悪循環。実花子の得策は、失策に終わろうとしていた。
でもここであきらめるわけにはいかない。
「それなら私は、絶対に椎名さんと結婚しません。絶対に振られてみせます」