一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
もう一度グイと引き戻される。目眩がするのはお酒のせいばかりじゃない。拓海の言動のせいでもあるのだ。
「私のマンションは……」
仕方なしにあきらめて運転手に住所を告げると、車が大きく旋回する。その揺れでさらに彼と密着するから堪らない。微妙にバランスをとろうとしていると、クスクスという笑い声が聞こえてきた。
「……なんですか?」
「そんなに体を突っ張らなくてもいいから」
そうは言うが、酔って眠っているときならともかく意識は戻っている。通常と変わらない状況で拓海とさらにくっつくなんて、ちょっと頭のおかしい人というのを差し引いても心臓に悪いのだ。
なにせ実花子はこの手のイケメンに免疫がないに等しい。それが、顔を寄せ合うほどの距離にいるのだから平常心でいるほうが無理なのだ。
酔っていたとはいえ、そんな男とよく一夜を共にしたものだと自分で自分が信じられない。
「もっと楽にして」
きっと拓海は、女性の扱いに慣れているに違いない。
それはお見合いした夜に嫌というほど思い知ったけれど。