一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

楽になるのなら寄りかからずにいたほうがずっとマシだと思うが、それに抗う術もなし。なにしろ拓海の腕でガッチリと押さえつけられているのだから。

そうして実花子ひとりばかりがドキドキしたまま、ようやくマンションの前でタクシーが停車した。本当にやっとという思いでいっぱいになる。


「ありがとうございました」


ここぞとばかりにパッと離れる。

拓海は先に降り立つと、奥に乗っていた実花子に手を差し出した。エスコートするつもりなのかもしれないが、その手をとるつもりはない。

運転手にお礼を告げ、拓海の手は見えなかったふりをしてタクシーを降り立った。ところが、そこで両膝がカクンとくの字に折れ曲がる。
意識ははっきりとしているはずなのに、足はそうではなかったようだ。飲みすぎたあとのいつもの実花子状態。フラフラなのだ。

それはひとりで歩けるレベルではとうていなく、体を支えようと咄嗟に車のドアのヘリを掴みかけた手を拓海にガッチリ捕獲された。


「そんな足取りでどうやって歩くつもり?」
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