一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
そのおかげで無様に倒れずに済んだのには感謝したい。でも、その謝意はすぐに後悔へと形を変えた。
「ひゃあっ!」
思わず悲鳴が漏れる。信じられないが、拓海が実花子を抱き上げたのだ。しかもそれがお姫様抱っこだというのだから性質が悪い。
「お、下ろしてくださいっ」
「歩けないのは自分でよくわかっているだろう?」
「無理です、ほんと無理ですってば。重い、重いんですっ」
椎名の腕の中でじたばたともがく。そうしたら危ないのは頭の中でわかっているが、これを抗わずしてなにを抗うというのか。
ところが、実花子の足掻きにも拓海は澄まし顔。よろけもしなければ、実花子を地面に落としそうにもならない。
「少しおとなしくできない?」
それは無理というものである。
「それなら下ろしてください」
「却下。それはできない」