いつか、さくらを片手に君に逢いに行くその日まで…
彼の顔がとても真っ赤だ。茹でたこみたい!!!
2人して笑いだした私だが、久しぶりに男の子と笑ったかもしれない。

「なんで?なんで、操っていると思ったの?」

彼にそう聞かれた。なんで?って言われてもなぁ。
少し思い出したくない過去だが、彼に話すことにした。あの日の事を…。

「私ね。昔ピアノをやっていたの。とても楽しかったなぁ〜!!! でも今はピアノが嫌い…」

彼が、何かいいたそうな顔をしていたが、聞きたくなかったので自分から理由を話した。

「中学生の時、県で賞とった私は全国のコンクールに出場したの…。私は、緊張でピアノの音が聞こえなかった。リズムも分からなかった…。その時だけかと思ったけれど発表会になると耳が聞こえなくなっちゃうの。私はそんなダメな子だから…。何もかもイヤで辞めちゃった!」

思い出すと、辛くなるから私はヘラヘラ笑いながらそう言った。彼は私に同情すると思った。だけど、言われた言葉は予想もできない言葉だった。

「じゃあ。やめて正解だったね。やっててもつまらないんじゃ意味が無い。俺は残念だけど、桜が可哀想なんて思ってあげられない。なぜならこれはさくらの問題だからだ。」

私は唖然とする。そんな事を言われたのは初めてだ。 私がボーッとしていると続けて彼は、

「ここは、俺だけの世界だ。俺自身が見ているものは、全部俺のもの。だから、もちろんお前の世界もある。今お前が見ている世界は綺麗か?もしお前が変えて欲しいと望むなら俺が変えてやる!さぁどうする?」

彼は私の目の前にたって手を差し伸べた。

彼の手をとったら、明るい世界を見ることができるのか…見れないのか。いやっ、見えるに決まってる!私は彼を信じてみたいのだ!
明るい世界を見てみたい。
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