秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
翔悟さんの苛立った声が響く中、会長は四十代後半くらいのお付きの男性を伴って歩き出す。その後ろ姿を翔悟さんは悔しそうに見つめ、視界から消えた後、悲しげな眼差しを私に向ける。
「すまない。会長……祖母のひと言で気分を悪くさせてしまった」
「いえ、大丈夫です」
笑って首を横に振ると翔悟さんの瞳が切なげに揺れて、私の胸まで苦しくさせた。
本当は、大丈夫じゃない。すれ違いざま、ほんの一瞬だけれど会長からジロリと睨み付けられたのだ。
「あなたは遊び相手なのよ。立場を弁えなさい」と言われた気分になり、その瞬間、会長が釘を刺した相手は翔悟さんではなく私の方だと悟った。
翔悟さんとの恋は一筋縄ではいかないと分かっていたけれど、こうして現実として突き付けられるとやっぱり挫けそうになる。
「穂乃果は遊びの相手ではないと、祖母には俺から話しておく。すまなかった」
「翔悟さん。そんなに気にしないでください。さ、早くご飯を食べましょう。お腹が空きました」
翔悟さんの気持ちは嬉しい。彼ならきっとチャンスがきたら会長にも私との関係を隠さず打ち明けてくれるだろう。けれど、その後のことを考えると正直不安になる。別れろと言われてしまった時、私はしっかり立ち向かえるだろうか。