秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
心の中にいる弱い自分を、私は笑顔で必死にひた隠す。場の空気を変えるように明るく話しかけながら、翔悟さんの腕をしっかり掴んだ。
翔悟さんと共に訪れたのは、会長と鉢合わせた場所から歩いて五分もかからないところにあるフレンチレストラン。すぐさま個室へと通され、ふたりっきりになったところで私はホッと息をつき、翔悟さんが個室を予約しておいてくれたことにひどく感謝した。と同時に、また知っている誰かに会ってしまうのではと、周りの視線に過敏になっていた自分に気付かされ、そんな自分が嫌になる。
「穂乃果」
彼の眼差しと声音から気遣いが伝わる。私は苦笑いを返しながら、彼と向かい合う形で椅子に腰掛けた。
「すみません。さっきのことで、やっぱりまだ少し動揺しているみたいです」
「無理もない。祖母は迫力があるからな。俺も子供の頃はよく怒られてたから、怖かった」
「本当ですか? 怒られる翔悟さんはあまり想像できないです」
子供の頃の翔悟さんを想像し、思わず笑みを浮かべる。彼のことだから、きっと今と同じように格好良くてモテモテで優秀だっただろうけど、怒られるという点だけが上手く思い描けない。