秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
体調不良の理由を考えた時、最近気になっていたことが浮かんだ。そしてそれを鋭く問われ、私は言葉を失う。
実は生理が遅れている。翔悟さんと何度も体を重ねているし、もしかしたらと思い始めていたところで、検査薬での確認はまだしていない。
妊娠していたらどうしよう。今はそんな不安などひたかくしにして、なんの問題ないと言うべきかもしれないのに、動揺が治らずうまく切り返せない。それどころか、無意識に会長から目を逸らした上、腹部に手を添えてしまった。
数秒後、会長が秘書へと低く命じる。
「店の前まで車を回すよう、大塚に連絡して。くれぐれも翔悟に気づかれないようにと、きつく釘を刺すのも忘れないで」
秘書は「わかりました」と返事をし、すぐにポケットからスマホを取り出した。電話をかける姿を横目で見つつ、このままではいけないと私は焦りを募らせる。
トートバッグを掴み取り、早くここから逃げ出さなくちゃと必死に立ち上がろうとしたけれど、肩にそっと手が乗せられて、呆気なく阻止された。
「もう少し付き合ってもらいます。もし仮に、翔悟の子を身篭っていたら大変ですからね」
薄く微笑んだ会長に、ぞくりと背筋が寒くなる。
妊娠していたとしたら、なんて言われるのか。喜んでもらえないことだけははっきりとしているだけに、未来が暗く感じる。
「……翔悟さん」
恐怖に体を竦ませながら、私は彼の名前を口にした。