秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
「翔悟には、今日の午後から三日ほど、出張に行ってもらう予定です。その間に片をつけましょう。あなたは今日は出社しなくて結構。その代わり、明日は必ず会社に来て退職願いを出して、そのまま消えなさい。良いですね?」
さも当たり前のように要求されたけれど、納得などできるはずがない。会長の思い通りになんてならない。この車を降りた後、翔悟さんにすべてを話そう。自分だけでは抱えきれない問題でも、彼とふたりでならきっと乗り越えられる。
心が決まると今すぐにでもここから離れたくなり車を降りようとしたが、急に会長が「あらあら」とこの場に似合わない明るい声を発する。
「出張前で忙しいだろうにあの子ったら。相変わらず仲が良いわね」
会長は窓の外を見つめていた。何を言っているのかとその視線を辿り、ぎくりとする。こちらへ向かって、歩道を翔悟さんが女性を引き連れて歩いて来る。その女性は間違いなく亜裕子さんで、彼女はとっても楽しそうに笑っている。
翔悟さんの表情も心なしか柔らかくて、彼女に心を許しているのが見て分かった。おまけに、彼女が親しげに翔悟さんの腕に触れていて、心がちくりと痛む。