瑠璃色の世界で、君に終わらない恋をした。
「ねー、健ちゃん開けて」

「自分で開けれねーのかよ」

「だってネイルが取れちゃうもん」

「そんな面倒くさいもんしなきゃいいだろ」

「サキさんだったら可愛いねって褒める癖に」

伸びすぎてもう随分根本が見えてきてしまったピンクベージュの人差し指を差し出すと、健ちゃんはため息混じりの笑いを溢して、地面に置かれたままの缶ビールを片手で器用に解放した。

「よし、乾杯するか」

「何に?」

「俺たちの叶わない恋に」

「ぷっ……何それ。馬鹿みたい」

二つのアルミ缶は空中でコツンとぶつかって、波立った黄金色が僅かに飛び出した。

私はゴクゴクと音を立てて上下する健ちゃんの喉仏を眺めながら、無機質な空気の中にタバコの煙を吐き出した。

絶え間なく繰り返す呼吸に付随して、私たちは様々な事をこなしながら日々を生きている。
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