瑠璃色の世界で、君に終わらない恋をした。
父が戻った事を除いて、四年ぶりの我が家にほとんど変化はなかった。
玄関に足を踏み入れた瞬間、懐かしい匂いが広がって、リビングから飛び出して来た母が私を抱きしめた。

「柚歌、おかえり。帰って来てくれて嬉しいわ」

「お母さん、ただいま。心配かけてごめんね」

「いいのよ。こうして帰って来てくれたんだから。久しぶりの長旅で疲れたでしょう?夕飯まで少しゆっくりしなさい」

母がいれてくれたアイスコーヒーと一緒に、私が空港の土産売り場で買ってきた銘菓を三人で食べた。
父や私の仕事の事、例年を上回る暑さ、近所の誰々ちゃんが結婚したなんていう他愛もない話が、しばらく続いた。
リビングの年季が入ったエアコンは効きが悪く、私は母の話に相槌を打ちながら部屋の隅にあった扇風機をつけた。それを見ていた父は「そろそろ買い替え時だな」と、苦しそうに喘ぐエアコンを見上げた。
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