瑠璃色の世界で、君に終わらない恋をした。
「お母さん、私の部屋って……」
暑さと母のお喋りがすっかり落ち着いた頃、気になっていた事を恐る恐る訊ねると、母は心なしか嬉しそうに頷いた。

「時々掃除して風を入れてるけど、柚歌の物はそのままにしてあるわよ。見て来たら?」

「うん、そうする。ありがとう」

ミシミシと音を立てる階段を登り、私は"YUKA"の扉の前に立った。深呼吸をしてドアノブに手をかけると、閉じ込められていた生暖かい空気が一気に溢れ出し、途端に息が苦しくなった。

六畳一間の小さな世界は四年前から時が止まったままで、それは嬉しくもあり、恐ろしくもあった。

私は二箇所ある部屋の窓を全開にしてから勉強机に座り、一番下の引き出しを開けた。
綺麗な幾何学模様があしらわれた丸いクッキー缶は、私がこの町を出たあの日のまま、そこで静かに眠っていた。
永遠に開く事のないはずだったその蓋はガムテープで何重にも巻いてあり、私は思ったより早くそれを後悔する事になった。
(かたく)ななガムテープを時間をかけて丁寧に取り除くと、パンドラの箱は静かに開かれた。
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