瑠璃色の世界で、君に終わらない恋をした。
「あー、もうだめだ……」

返ってきた答案用紙を見ながら小言を言う母の姿が脳裏に浮かんできて、思わずうなだれた。

「もう過ぎた事は仕方ないんだから、忘れよ忘れよ!」

テストの出来は私と同じ、もしくはそれ以下であろう那月は、不思議なくらいに余裕の表情をしている。

「やっと秀くんに会えるー♪」

「あ、ちょっと那月、待ってよ!」

校門を出た途端スキップしそうな勢いで下り坂を降りていく那月を、重い足取りで必死に追いかけた。




待ち合わせより少し早く駅に到着したのは予定通りで、私たちは駅ビルのパウダールームでメイクを直しながら"彼ら"の到着を待った。
鏡に向かっている時、那月の表情がいつになく真剣になる事を私は知っている。

「ねーどう?変な所ない?」

「うん、大丈夫。可愛い可愛い!」

「本当?新しいリップ浮いてない?やっぱりいつものに塗り直そうかな……」

「大丈夫だってばー」

心配そうに私の顔を覗き込んでくる那月をなだめていると、彼女の携帯電話が鳴った。

「秀くんたち、着いたって!」

パタンっとそれを閉じた那月は目をキラキラさせて、もうすっかり女の子の表情だ。
私たちは鏡の前に広げていたメイク道具をそれぞれのポーチへ詰め込み、待ち合わせの場所へと急いだ。
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