極甘ストロベリィ
「……やっば…」
「なぁにがだよ?」
赤くなった顔を片手で覆ってうずくまると、本棚を漁るのをやめたヒデが後ろからのしかかってきた。
いつもなら振り払うけど、今はそれどころじゃない。
「まじ、可愛すぎ……」
「は?何言われたの、お前…」
少しにやけだした俺を不審そうに見ながら声をかけるヒデ。
「誰が言うか」
「ひっどー!」
言えるかよ。
ただ名前を呼ばれただけ、だなんて。
“また、行こうね……け、謙吾くん…っ”
思い出すたびにニヤケて、佳世ちゃんを想う度に幸せな気分になれる。
女の子に名前を呼ばれるなんて日常茶飯事。
むしろ、名字で呼ぶ子の方が少なかったのに。
やっぱり好きな子に名前を呼ばれるのは別らしい。
「あー…お前も好きな奴、見つけろよ」
「えー」
ニヤケた顔のままヒデに助言してやると、少しだけ嫌そうに顔を歪められた。
それを見て、少し現実に戻った俺は小さく息を吐く。
だって、今の態度は凌ちゃんのことを好きじゃない証拠だろ?