極甘ストロベリィ
そんな心臓に気付かれたくなくて、なんとか抜け出そうともがいていた時。
「謙吾っ!」
「ぎゃっ」
突然聞こえた声と共に軽くなる背中。
声のした方を見ると、凌が堤くんの襟元を掴んでいた。
「凌……」
「おはよ、佳世っ」
私が声をかけると、凌はパッと手を離して私に駆け寄ってきた。
油断していたのか、突然離された堤くんはよろけてる……
「さ、学校行こっ」
「へ、でも堤くん…」
「いいの、あんな奴気にしないの」
「しーのーぐーちゃーん」
凌が私の手を引っ張った時、地獄の底からしてきたような低い声が真後ろから聞こえてきた。
無駄にビクッとした私に苦笑しつつ、凌はゆっくり後ろを振り返る。
そしてぴたりと動きを止めてしまった。
………?
そんな凌を不思議に思って後ろを振り向くと、そこには堤くんの他にもう一人。
「今池、秀弥……」
「はーい、おはよん」
軽く手を振る彼を見て、凌は目を見開いて名前を呟いた。