君はロックなんか聴かない
「何それ」
「私、音楽好きなんだよね、もちろん、実力はまだまだだってわかっているけど、みんなで練習しているとき、一人で練習してる時、ライブをやっている時私は私の宇宙を作れる、それが何とも言えないほど心地いいんだよね、久間くんは楽しくないの?」
「え、うん、勿論楽しいよ、楽しいけど、楽しくないこともたくさんあるよ、橋本さんもこれから大変なことがたくさんあると思う、でもその気持ちを忘れなければ俺たちが出来なかったこともできるかもね」
「久間くん達に出来なかったこと?」
「橋本さんに俺たちがどう見えてるか解らないけど俺たちはものすごく弱いんだ、もうこれ以上進めないかもしれない」
私は黙って久間くんを見つめていた。
「これは言ってもいいのか解らないけど、うーん、でも橋本さんならいいかな」
久間くんは真剣な表情で考えこむ。
「言いたくない事なら無理に話さなくてもいいよ」
「ううん、いや、花形詩織って知ってる?」
「解らない、誰?」
「花形のお姉ちゃんだよ」
「え、そう、お姉さんがいたんだ」
「うん、いた、でも、綺麗な人だったよ、性格よくて、何でも出来てとても強くてキラキラ眩しい人だった、でも死んじゃった」
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