君はロックなんか聴かない
学校につくと多くの名前の知らない人とすれ違う。同じ制服を着た赤の他人。まだ慣れることは出来ない。

駐輪場に自転車を止め、教室に向かう。ひとつ深呼吸。呼吸を整える。そこでぐっと気合いを入れる。

私の教室。見慣れない。教室の扉を開ける。

何人かの生徒が既に来ている。何人居るだろう。目を合わせないように下を向いていたので分からない。

窓際の自分の席まで向かう。私はカバンから本を取り出して読書を始める。

「おはよう」

須藤さんだ。

「お、おはよう」

後ろにもう1人いる。

「おはよう」

「おはよう」

知らない子にも挨拶をした。

「こちら青田さん、こちら橋本さん」

須藤さんは仲介となってお互いに紹介する。

「よろしく」

「あ、よろしくお願いいたします」

いつ知り合ったのだろうか須藤さんのコミュニケーション能力は凄まじい物がある。

この青田という子はショートカットで華奢だ、仲良くなれるだろうか不安になる。何を話すべきだろう。

「同じ中学の人?」

「ううん、違う、さっき仲良くなった」

「え、ああ、そうなんだ」

「青田さんもギターやってるんだって」

「え、そうなんだ」

「うん、ギターとベースやってる!橋本さんもギターやってるんでしょ、昨日持ってきてたし、今日は持ってきてないの?」

「うん、軽音楽部無かったから持って来なかった」

「え、軽音楽部無いの?」

「う、うん、あるにはあるんだけど、先輩がイマイチだった」

「あ、そうなの?」
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