君はロックなんか聴かない

あっという間にプラチナの番が来た。入場と同時に声援が飛び交う。相変わらずすごい人気だ。私たちは袖から見守る。体育館の入口にアイナの姿もみえる。来てくれたんだ。
「聴いてください!スピードスター」
久間くんの掛け声と同時にドラムのカウント!ギターのイントロ相変わらず色っぽいサウンドだ。圧倒的なサウンド、キャッチーなリズム。本当にすごい才能だ。これはこんなとこに埋もれてはいけない、才能のある人間は背負った十字架を下ろさないといけないのだ。握った拳に力が入る。
彼らは持ち時間の30分を誰も飽きさせる事無くオーディエンスを夢中にさせ続けた。本当にこれはCDを出したり配信をしたらするべきだ。白石さんなんて完全にうっとりしている。
こんなに艶やかで破壊力のあるサウンドは他に類を見ない。私は緊張も忘れて吸い込まれるようにその絶叫を眺めていた。
「すごいね」白石さんが言葉を零す。
「うん」
プラチナの演奏は終わった。
「ありがとうございました」
大歓声が体育館中に響き渡る。
「次だね」えみちゃん言う。
「うん」私はそれ以上の言葉が出てこなかった。
「円陣組む?」
「円陣?」
「手を出して、声出すやつ」
「ああ、うん、いいね!、やろう」
「ひめちゃん!やって」
「うん、プラチナも凄いけど私たちも負けないように文化祭、楽しみましょう!行きましょう」
「オー!」女子高生の雄叫びが袖から漏れる。
久間くんが少し笑う。
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