君はロックなんか聴かない
「橋本さん」
名前の分からない教卓の前に立つ、まだ若い男性の担任に名前を呼ばれる。ずるいと思った。向こうは名簿を持ってるじゃないか、それなら全員の名前を把握出来る。

「はい」
勢いよく立ち上がったのは良いが私は緊張のせいで言葉を失った。先程まで考えていた言葉出てこない。

クラス中の視線が一気に集まる。鼓動は早まる。

「わ、私は橋本姫香です、しゅ、趣味は音楽です、ギターとかピアノ弾けます。よろしくお願い」

誰とも目を合わせずに勢いよく言葉を発して一礼する。一瞬で挨拶は終わった。苦しんだ物のあっさり終わってしまった。

パチパチとクラス中から拍手の音が聞こえる。大勢いるから大きな拍手に聞こえるが心がこもってない事は私は知っている。

しかし言いたい事は言えた。背中には変な汗が出たがとりあえず無難にこなすことが出来た。及第点だろう。


そんなことを考えていると

もう後ろの生徒の発表も終わっていた。

私の印象どうだったんだろう。

他の人の自己紹介ぜんぜん聞けなかったな、趣味の合う人はいただろうか不安が残る。


クラス中の自己紹介が終わった頃には
ほぼまるまる1時間の授業の時間を使い切っていた。

残りの時間はまとめを担任の先生が話していた。
先生の名前も一番最初に紹介していたが思い出せない。しかしそのうち覚えれるだろう。

時間を区切るチャイムがなる。
クラスはすぐに休み時間に入った。

あたりを見渡す、席を離れる人も何人かいるがだいたいが座ってスマホをいじってる。

初対面のはずが上手く話しかけてる人も何人かいる。凄い才能だ。

私も話しかけないといけない。私の野望は達成されない。
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