君はロックなんか聴かない
部屋の前に立つ。部屋は3つある。どこにも人が入ってるようだ。部屋から漏れる爆音で分かる。楽しみだ。

久間君が扉を開ける。

「お疲れ」

「お疲れ」

そこには制服の男子が二人いた。一瞬沈黙が流れる。

「お疲れ?」

「ほらメールでいったギターの子」

「ああ、よろしく」

「こっちがギターの花形、ギターはめちゃめちゃうまい後で教わるといいよ、作曲とかも担当してる、で、こっちの大きいのがベースの愛川、リズム感がめちゃめちゃ上手い、こっちが橋本さんと須藤さん、二人ともギターだって」

みんな無言で頭を下げる。

ギターの男子は持っていた缶の飲み物をグッと飲み干す。何の飲み物だろう。お酒のような気もする。

「まだやってないの?」

「ああ、さっきまで弾いてたよ」

「もうやる?」

「ちょっと待って、もうちょい休憩」

あー、あー、久間君はマイクのセッティングをする。私はその様子をじっと見ていた。

「彼女?」

「ちげーよ」

「あ、そうなん、めっちゃかわいいじゃん、うちの何組?俺と付き合わない?」

「彼氏います」須藤さんが答える。

「ああ、そうなん、何だよ、俺楽しみにしてたのに、もう帰りたいんだけど」

「まだ来たばっかりだろ」


私は少しがっかりした。気怠そうにギターを弾かないこの男子にいやいややってるのだろうか、私はこんなに恋焦がれているのに、悔しい。私の想像のバンドマンはもっとテキパキとずっと楽器と向き合っているイメージがあったからだ。
< 26 / 140 >

この作品をシェア

pagetop