君はロックなんか聴かない
学校と家の往復なかなか味気ない。今日は学校帰りにえみちゃんとモスドナルドにきているファーストフードのハンバーガー屋さんだ。とても安価で学生の財布にも優しい。たまに無性に食べたくなる。学生の喋り声で店は賑わっている。違う制服も多い。

「ひめちゃん何頼んだの?」

「私はチーズバーガーだよ、えみちゃんは?」

「私は普通のハンバーガーだよ、あとポテト」

席にはお互いのスマホと番号札が置かれている。会って話しているのにお互いスマホから目を離さない。不自然だろうか、いや他の席の女子高生もスマホを手放さない子は多い。

「ひめちゃんバイト決まった?」

「うーん、短期で工場でいいかなって思ってる」

「え、工場?大変そうじゃない?何の工場?」

「うーん、大変かな?なんかスーパーの惣菜を作る工場らしい、短期でできるし時給が結構いいんだよね」

「そうなんだ」

「お待たせしました、こちらチーズバーガーでございます、こちらハンバーガーとポテトでございます、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

席にハンバーガーが置かれる。えみちゃんは置かれたポテトを口に運ぶ。美味しそうだ。私も頼めばよかっただろうか、そう思いながらハンバーガーにかじりつく。美味い。

「えみちゃんは何かバイトするの?」

「うーん考え中、でもなるべく早く始めたいよね、なんだかんだ家の近くのコンビニで良いかなって思ってる」

「コンビニね」

ハンバーガーをかじる。美味い。

「何かいいバイトないかなー?」

「いいバイト?」

「時給が良くて、家から近くて、楽なバイト」

「んー、ないよ」

「ないか」

私たちの雑談は店内の学生たちの騒がしさでかき消された。
他愛のの無い幸福の時間は簡単に過ぎ去った。
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