君はロックなんか聴かない
目の前の事に集中していると時間の経過は早い。時計も無いから時間を気にする事も出来ない。昼までの時間はすぐに終わった。

昼は倉庫の2階のホールでお弁当を食べる。人は多いが私は一人だ。寂しい。スマホをいじりながらの食事だ。音楽も聴く。これで少しは孤独を誤魔化せる。

ギターが無性に恋しくなる、拘束されて触れられないと余計に会いたくなる。音楽がやりたい。音楽をやるために音楽をやらない。矛盾。「はぁ」ため息がこぼれる。

「おはよう、今日何してるん?」久間君からだ。

「バイトだよ」

「そっか、了解、頑張って!」何だろう何か用があったのだろか気になる。

「お疲れさま!ひめちゃん、どう?バイトの方は」えみちゃんからだ。

「大変だけど頑張ってるよ、えみちゃんもバイトだっけ?」

「そうだよ、私も慣れなくて大変、もう疲れたよ、でもゴールデンウィーク最終日は楽しみにしてた、ライブだからお互い頑張ろう!」

「うん、楽しみ、頑張ろう」

励まされた。午後も頑張れそうだ。無に無になろう。考えるとしても楽しい事だけ考えよう。

実はこんなに音楽好きなのに大きい学生ライブには行ったことはない。何故なら楽しみより嫉妬が勝ってしまっていたから、でも今は違う、私も私のバンドが始まりそうだから、嫉妬は0にはならないかも知れないが勉強できるとこは勉強して良い意味の刺激を貰いに行きたい。久間君のバンドはとてもレベルが高いし他のバンドも知れる良いチャンスだ。勿論次は出場する用になりたいが今回は素直に楽しみたい。

ステージから見るライブってどんな世界なんだろ、とても居心地のいい物なんだろうか、午後はそんな妄想を続けていた。

いや、次の日もその次の日も愉快な妄想を続けていた。すると時間は一瞬で過ぎ去った。

工場内には終わりの鐘が鳴る。

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