君はロックなんか聴かない
「どうだった」

「ぜんぜんダメわけ解らない事言っちゃった」

「何それ」えみちゃんと青田さんは笑っていた。

「何だろうね」私も笑っていた。

自分でもとっさのことで理解が出来てなかった。

まだ心臓は高く波打っている。

いつもと同じ教室、いつもより大きく見えた。

窓の外の空は清々しく晴れていた。

何がしたかったのだろうか私は混乱していた。

ふと教室のベランダに目がいく。雀が二匹空へ飛び立った。私も大空に飛び立ちたい気分だった。あの大きくて青い空へ。どれだけ気持ちが良いものだろう自由に飛べたらそんな事を思った。きっと大空は全てを受け入れてくれるだろう、この大きな誓いも恥も期待も不安も全てを受け入れてくれるだろう。翼が欲しい。

その日の夜も私はギターを抱いていた。高鳴る鼓動は抑えきれない。タコが出来ようが何度も何度も同じリフを弾き続けていた。気持ちの良いメロディが降りてくる。私はすかさずメモを取る。その繰り返し。なんていい夜何だろう。

夜風が気持ちいい。音楽は全てを忘れさせてくれる。こんなにも私を夢中にさせてくれる、そうだ私は音楽に恋をしている。これ以上は何も望まない。幸せだ。



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