君はロックなんか聴かない
そこは間違いなく私たちの世界だった。

だが少し物足りなさも感じた。あの時感じた久間君たちとやった時のような感動は無かった。いや感動はある。だが何か足りない。厚みがないのだ。何故だろう、解らない。しかし今はこの世界を楽しむことにした。私はこの世界を壊したくなかった。

曲が終わる。ドラムのリズムに合わせて音を閉じる。

「うん、次の曲やったみよう」

またドラムのカウントで曲が始まる。

いい曲だ。また世界に引き込まれていく。悪く無い。悪く無い筈。だがやはり何かもの足りなさを感じる。何故だろう解らないが、これがここからの私たちの課題になるだろう、ジャカジャカとギターは切なくスタジオ内に鳴り響く、私たちにはまだ宇宙を作り出すことは出来ないようだ。

しかしそれは顔には出さない。それはまだ言うべきでは無い。私たちはまだ始まったばかりだから、私たちには可能性がある。そう信じて行くしかない。

曲が終わる。

無言の時間が流れる。

「どう」青田さんが口を開く。

「う、うん」私は笑顔で答える。課題はあるが大きなミスは無かったと思う。そこまでは解らなっかった。だから適切な言葉は出てこなっかった。
< 59 / 140 >

この作品をシェア

pagetop