君はロックなんか聴かない
「橋本さん、良かったね、結果オーライって感じかな?」

「うん」

私の鼓動はとても力強くそして早く高鳴っていた。

「久間君イケメンだったね」

「あ、うん」

「もうバンド組んでるのかな?」

「どうなんだろう」

夕焼けが少しづつ暗くなりつつあった。
私達は駐輪場に向かっていた。

「あ、私電車だから、ここで!今日はありがとうね、じゃあまた」

「ううん、こちらこそありがとうございます、また明日ね!」

私は見慣れた自転車に跨った。そして見慣れない学校を後にした。ペダルが軽く感じる。今日から始まったんだ。やっと始まったんだ。私の夢の第一歩はここから始まる。

背負ったギターは重いが足元は軽い。スラスラと進んでいく。鼻歌をこぼす。

土手道を颯爽と走る。夜風の肌寒さを今は感じない。どこまででも走っていけそうだ。

街中が明るい。眩しいくらい明るい。それは何かのヒントなのではないだろうか私はメモ帳を取り出し。今の思いを書き綴った。いつかこれを曲に出来たらいいのにと胸を高鳴らしていた。

土手道を走り終えると見慣れた住宅街に安心させられる。落ち着く。

何処からかカレーの匂いがする。どこかの家の夕食だろうか、私もお腹が減ってきた。急いで帰る。
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