君はロックなんか聴かない
「ただいま」

「お帰りなさい」

「どうだった?」

「すごかった、何にも買えなかったよ」

私は急いで弁当箱を広げる。

「あれを並び切る自信はない」

「そんなに?」

「いや、すごかったよ、熱中症なるよ、あの中いたら」

「えー、それは行きたくない」

「絶対行かない方がいいよ」

「んー、しかしあついね」

「うん、暑すぎ」

えみちゃんは下敷きでYシャツの中に風を送り込む。いい香りがする。エロい。正直私もやりたいが少し抵抗がある。教室の中には男子もいるし恥ずかしい。

私は卵焼きを食べる。保冷剤のおかげで冷えてはいるが味は問題ない。

青田さん制汗シートで体を拭いている。私も拭きたい。今すぐこのベタつきから解放されたい。急いでお弁当を食べる。学食を覗いたせいで時間が無い。母には悪いが味わってる余裕は無い。

私はきっと普通の女子高校生だ。何処かスターの要素はあるのだろうか物語の主役になれるような要素はあるのだろうか客観的に見たら多分音楽に少し詳しい平凡な女子高校生なのだろう、悔しい。あの双極なスター達は同じ校舎にいるのにまだまだ距離はある。はあ、またため息が出る。

「ため息?」

「え、あ、ごめん」

「悩み事?」

「う、うんちょっとね」

「大丈夫?なんかあったらすぐ相談してね」

「うん、大丈夫、ありがとう」

私はお弁当箱を鞄に詰め込んだ。授業が始まる。お腹はパンパンだ。




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