君はロックなんか聴かない
家に帰ってはひたすら練習あるのみ。手を洗ったら制服もそのままギターを抱きかかえる。チューニングを整えて何度も同じ曲を引き続ける。落ち着く。何時間も何時間も音楽と向き合って私の居場所を確認する。何時間も何時間も引き続ける。

「ひめ!お風呂入らないの?」

「入る」

いつもこの調子だ。風呂とご飯の時間が来るまで引き続けて母に止められる。そして急いで風呂の支度をする。

風呂の中ではひたすら歌唱練習。音が響いて心地よい。家にいる時間は少しも無駄にしない。

風呂上がりのエアコンは気持ちがいい。扇風機も同時に当てて涼しい。

「ひめ、風邪引くよ、早く晩御飯食べちゃいな」

「はーい」ハンバーグだ。とても美味しそう。さっきハンバーガーを食べたのは関係ない。女子高生の胃袋はブラックホールなのだから無限に食べられる。

「ひめ、最近学校はどう?」

「うん、楽しいよ、暑いけど」

「いや、勉強の方」

「え、まあ、まあまあかな」

「まあまあってもうすぐ期末テストでしょ、しっかりしなよ」

「はーい」勉強は嫌いじゃない。嫌いじゃないけど好きではない。最低限はするけど私は音楽の方が大事それ以上はしない。
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