【完】溺愛したいのは、キミだけ。
その日の昼休み、江奈ちゃんとお昼ご飯を食べたあと教室に向かって歩いていたら、その途中で江奈ちゃんは部活の友達に呼びだされてどこかへ行ってしまった。


なので、私は一人で教室へ戻ることに。


教室の前のドアから中に入ると、教卓の前で黒板を消している倉田くんの姿があった。


ちょうどこちらを振り向いた彼と目が合ったので、声をかける。


「あ、倉田くん。今日日直?」


「おぉ、涼川さん。そうそう、日直だからやることいっぱいあるんだよね」


「そっか、お疲れ様。日直の仕事大変だよね」


「ありがと。まぁ、今日一日だけだからいいけどな」


そう言って爽やかな笑みを浮かべる倉田くん。


今までクラスの男子とは、翠くん以外あまり関わることがなかったんだけど、倉田くんは本の話だったり、意外と共通の話題があるので話しやすい。


「そういえば、あそこの花瓶の水替えるのも日直の仕事なんだっけ?」


ふと、倉田くんが教卓横の先生の机の上にある、花が生けられた小さな花瓶二本を指差す。


このお花、担任の石田(いしだ)先生が好きで飾っているものなんだ。


「あ、うん。たしか、一日一回替えるって先生が言ってた」


「そっか。じゃあ俺、替えてくるよ」



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