【完】溺愛したいのは、キミだけ。
「えっ、そんなっ。いいよ倉田くん、自分でやるから」


「でも、俺がこぼしちゃったし」


「あ、ありがとう……」


「ごめんね、俺のせいで濡れちゃって」


申し訳なさそうに再び謝ってくる倉田くん。


でもどうしよう。男の子にスカートを拭いてもらうのは、なんだかすごく恥ずかしい。


ハンカチを持った彼の手が太ももに触れて、思わず顔が熱くなる。


すると次の瞬間。


――グイッ!


突然うしろから腕を回され、倉田くんから身を引きはがすかのように、誰かに片手で抱き寄せられた。


「触んなよ」


同時に聞こえてきた、怒りを含んだような低い声。


……えっ?


ドキッとして振り返ったら、すぐ後ろには怖い顔をした翠くんが立っていて。


ウソ、翠くん! どうして……。


翠くんの表情はいつになく険しくて、なんだかすごく怒っているように見える。


「えっ、都築?」



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