【完】溺愛したいのは、キミだけ。
「あー、あれはべつに抱き合ってたとかじゃねぇから。最近あいつから三年の先輩にしつこく言い寄られて困ってるって相談受けてて。その件で話聞いてたら向こうが急に泣きながら抱きついてきたから、落ち着けって背中ちょっとさすっただけだろ」


「えっ、それだけ?」


俺が事情を話すと、間の抜けたような声を出す颯希。


「そうだよ。なんで好きでもない奴と抱き合うんだよ」


「……そ、そっか、なんだ。やっぱり誤解だったんすね。よかった」


「当たり前だろ」


「俺、てっきり翠先輩は、春田に言い寄られてその気になったのかと……」


さらにはまたふざけたことを言いだしたので、軽くどついてやった。


「お前なぁ、ふざけんなよ。一ミリも興味ねーよ」


「いてっ」


「……あれ?」


だけどそこで、一つ疑問が浮かぶ。


さっき確か、春田と俺が抱き合ってるのを見た人がいたとか言ってたけど。


「てか颯希、それ誰から聞いたの? もしかして部で噂になってんの?」



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