【完】溺愛したいのは、キミだけ。
私の心には、別の人がいるから。


倉田くんに告白されて、今あらためて自覚した。


やっぱり私が好きなのは、翠くんなんだって。


もうどうにもならないかもしれないけれど、無謀な恋かもしれないけれど、それでも好きな気持ちは消えないんだって。


だから、申し訳ないけれど、断らなくちゃ。


「あ、ありがとう。でも……ごめんなさい」


おそるおそるそう告げたら、倉田くんはハッとしたように一瞬固まった。


そして、すごく悲しそうな顔で下を向く。


「……そっか」


そんな彼を見ていたら、ますます申し訳ない気持ちになる。


「じゃあ、今すぐ付き合うとかじゃなくてもいいから、友達から始めるっていうのもダメかな?」


さらにはこんな提案をしてきた倉田くん。


だけど、私の答えはやっぱり変わらない。


再び断ろうと口を開いた、その時。


――グイッ。


突然背後から誰かに片腕でつかまえられて、そのままギュッとうしろに抱き寄せられた。


「悪いけど、ヒナは俺のだから渡せない」


えっ……?



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