【完】溺愛したいのは、キミだけ。
かすれた声で返事をし、飴を受け取ると、また話しかけてくる涼川。


「なんか今日、エアコン強いですよね。喉、大事にしてくださいね」


そう言ってニコッと笑った顔があまりにも可愛くて、思わずドキッと心臓が跳ねた。


ビビッときたって言ったほうが正しいかもしれない。


でもそれ以上喋るとまた咳が止まらなくなりそうだったので、俺は黙ってのど飴を口にしたのみで、何も言えず。


もっとちゃんとお礼を言えばよかったんだろうが、彼女はそのまま次の駅ですぐに降りて行ってしまったので、結局話したのはそれだけだった。


だけどそれ以来、彼女のことが気になるようになってしまった俺。


考えてみればすげぇ単純だし、ちょっと親切にしてもらったというだけのことなのに。


なぜかあの時の彼女の笑顔が頭から離れなくて。


その後も学校でたまに見かけるたびに、彼女を目で追ってしまうようになった。


たぶん、一目惚れってやつなんだろう。



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