【完】溺愛したいのは、キミだけ。
「うちの顧問、マジで鬼だろ」


困ったように笑いながら話す翠くん。


「……たしかに。武藤先生ってほんとに厳しいんだね」


「そーなんだよ。ただでさえ練習もキッツいのに。はー、マジで勉強しないとヤバいわ、俺」


「翠くんは、数学苦手なの?」


「うん、死ぬほど苦手」


そうなんだ。じゃあ……。


「あの、よかったら私……」


言いかけたものの、口ごもる。


『教えようか?』なんて言葉が一瞬浮かんだけれど、それを口に出す勇気がない。


でも、困っている翠くんの役に立ちたいなんて思っている自分がいる。


少しでも、彼の助けになりたくて。


「ん?」


翠くんが不思議そうな顔で私をじっと見る。


ど、どうしよう。余計なお世話かな。


でも、言いかけちゃったしなぁ。


「わ、私でよかったら、協力しよっか?」


あぁ、言っちゃった!



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