平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
「まずは相棒候補の騎士に出会うと、頭を下げて一礼します。これはファーストコンタクトと言われているもので、白獣から騎士への候補アピールですね」

「カルロもそうしたんですか?」

「しましたよ。そうやって意思表示がされ、それを団長が受理して合意のもとで連れて帰って来たんです」

いつだって偉そうに頭を上げているので、なんだかイメージがない。

リズは、目の前に広がる芝生の上で、背を伸ばして座っているカルロへと目を向けた。堂々としているせいか、座っていてもさまになる。

「そうして次に、人間である騎士やその暮らしを知るために、別の者を教育係りに指名します。リズさんもご存知かと思いますが、腰を下ろして座るのがセカンドコンタクトです」

「……つまり、『お座り』?」

「はい。警戒心の強い野生の白獣は、不慣れな初めての場で緊張します。落ち着き処、と決めた人間の教育係りの前で、初めて警戒を解いて腰を下ろすんですよ」

落ち着き、初めて緊張を解く……なんだか耳に慣れないキーワードだ。

リズが困惑を露骨に滲ませると、コーマックが年上のお兄さんのようにニコッと笑って、品のある仕草で手を前に出してこう続けた。

「信頼します、という意味合いでもあるんですよ」

「信頼、ですか……?」

「あなたのことは信じる。だから私に『この場所』や『人や暮らし』を教えて欲しい、という、白獣にとっての意思標示でもあるんです」

私(けもの)に人と、そして人と共にいる相棒獣のことを教えて欲しい――それが、あの時のカルロの言葉でもあったのだろうか?
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