平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
いつの間にかリズは、混乱も収まってしおらしく頷き返していた。すると不意に彼が目を熱くして、頬を撫でていた手を止め、そのまま顔を近付けてきた。

「団長様……?」

不思議に思って見つめていたら、――ぐっとこらえるようにジェドが止まった。悩ましげな眉を寄せた彼に、胸に抱いている幼獣ごと抱き締められる。

「無事で良かった」

あまりの力強さに、一瞬息が詰まりそうになった。

たくましい腕が、リズをぎゅぅっと抱き締める。自分よりも高い体温がじんわりとしみてくるのを感じていると、安心させるみたいに背をポンポンと撫でられた。

「帰ろう、リズ。怪我の治療もしないと」

そう言われて、リズは自分が落下したことを思い出した。少し乱れてしまっている足元へ目を向けてみれば、白い肌の上に小さなかすり傷も見えた。

ジェドに手を取られて、立ち上がらされた。

まるでエスコートされている気分で、とても不思議な感じがした。軍人というより貴族みたいに見えて、彼の美貌をぼうっと見つめてしまっていた。

「おいで、リズ」

気遣うような優しげな微笑で、彼が随分柔らかな口調で言う。

こんな彼を見たのは初めてだ。普通に笑える人なんだな……そう思いながらも、気付けばリズは、促されるまま彼に導かれてカルロの方まで来ていた。

ジェドの手が、離れていく。なんだかそれを夢見心地で目で追ってしまっていたリズは、高い位置からじっと向けられているカルロの視線に気付いた。
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