平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
だが、その印象が吹き飛ぶくらいに、直後の戦闘光景は凄まじかった。
ああ、これ、バッタリ近くで遭遇したら危ないやつだ。
噛み付く感じも狼っぽかった。人が裕に乗れる国内最大サイズの獣なので、頭くらい一噛みで軽くイける――と、田舎育ちの鈍いリズも危険性を理解した。
「うぅ、でもせっかく就職出来た場所だもん……」
恐らくは、まだ重要ポストも任されていない新人は、多分そうやって危険なお使いをやらされる運命なんだろう……とも思って諦めてはいる。
何せ今年、非軍人籍の別館採用の入社は、リズ一人だった。それもあって、正直のところ、投函ミスでなんで軍部に通ったのかも不思議ではあった。
ここは軍部の中でも、採用枠がかなり狭いとも言われている遠方の獣騎士団だ。両親も村人達もかなり不思議そうにしていたものの、結果的には村一番の偉い就職先を得たリズを応援して、困惑ながら送り出してくれていた。
だから頑張りたい気持ちも二割増しだった。別館の事務勤務組の先輩達だって、慣れて新人期間が、給料も高額だし有給もかなり優遇されている、と言っていたし……。
「でも今一番の問題は、この書類が団長様宛てということ……」
リズは、これは上司案件なのでは、と胸に抱えた茶封筒を見下ろした。
獣騎士団の団長、ジェド・グレイソン。
彼は国内で二番目の広大な土地を有する、グレイソン伯爵家の人間だ。若くして爵位を継ぎ、現在このグレインベルトの領主でもあるお方である。