平凡な私の獣騎士団もふもふライフ

美貌と才にも溢れ、二十歳にして獣騎士団のトップについた実力派。それでいて浮ついた話し一つ聞かないのに、二十八歳の現在も婚約者はまだない。

そんな彼は、理想の優しい上司としても知られていた。別館業務についても直々に相談を聞いてくれて、貴重な時間を裂いてその場で一緒に改善策を考えてくれるという。

リズの上司組は「困ったことはないか、大丈夫か」と自ら尋ねてくる素晴らしいお方と語っていた。

それでいて彼は、日頃から非軍人籍の部下達への労いも忘れない。柔和な笑顔で「頑張っているね」「お疲れ様」と声を掛けられるたび、職員達はやる気が漲るのだという。

おかげで別館の女性職員や、町の女性達からはとくに絶大な人気があった。

彼女達の噂によれば、貴族界でも大変注目されている伯爵様にして、獣騎士団長様であるのだとか。

「私、軍どころか、貴族の作法もあまり知らないでいるのだけれど……」

…………へまして首になる、ということはないだろうか?

そこが、リズにとって一番の心配だった。別館の女性職員達からの嫉妬的な心配は一切していない。そもそも彼女達は、当初から恋愛の憧れは無しで考えている。

実は、どうやら団長と副団長は出来ている――らしいのだ。

だから結婚適齢期であるのに婚約者を持っていない、というのが別館側や町で持ち切りの話だった。そのため令嬢達も、見合いの申し入れを遠慮しているのだとか。

獣騎士団の副団長は、コーマック・ハイランドという男だ。

年齢は、団長のジェドと同じくらいだと聞いている。リズもチラリと遠目で見掛けた際、優等生美男子で、優しげな騎士様といった印象を感じた。

二人とも美しい男なので、並ぶと大層絵になるのだとか。

おかげで別館の女性達の妄想力も爆発していた。非軍人籍の、しかも下っ端の新人なので、リズはトップ上司二人のセットは見たことがない。

出来る男同士の恋愛。田舎ではなかったことなので未知の世界だ。まぁ恋愛に性別や年齢は関係ないと思うし、一番そばにいた人と恋に落ちるのは有り……だろう。

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